その雀の周りには十数羽の雀がいた
車が来ては飛び去り
車が去っては降りてきて、またその雀を囲む
飛び去るといっても、車に轢かれたりブツかったりするのでは・・と心配するほどかなりギリギリでの攻防であった
その光景を確認した数秒後
今度は私の運転する車がその攻防の対象となったが若干速度を緩めながら無事通過した
少々奇妙な光景であったが先を急いだ
他の車が気にも留めないのと同じように・・
しかしやっぱり気になって数百m走って車を路肩に停めた
空き地に突っ込んでUターンして、来た道を戻った
先ほどの場所に近づくと一羽の雀がうずくまった雀の上に乗り懸命に羽ばたいているのが見えた
上の雀は足で下の雀を掴み羽ばたいていた
他の雀はその周りをとり囲んでいた
上の雀が、うずくまった雀を、その場所から移動させようとしていた意図が見てとれた
となると周囲を囲む雀たちは、その応援や心配をしてるということなる
なんとも言い表せぬ感情に包まれた
気がつくと私は車を停車し、その様を側で見ていた、いや周囲の雀と一緒に応援していた
だけど上の雀がいくら頑張っても自分と同じ大きさの下の雀が持ち上がることはなかった
私は車を降りた
雀たちは一斉に飛び去った、一羽を残して
あがった雨が濡らすアスファルトの上にうずくまる動けぬ雀を両方の手のひらで包むように持ち上げた
生命を感じた、小さいが確実な生命であった
何だか妙にこの感覚がくすぐったく感じた
車道から外れた付近の草むらの上にそっと降ろし、かすかに震えるその小さな体についた更に小さな頭を指の腹で撫で別れの挨拶をした
何故うずくまっていたのか?
この先どうなるのか?・・などと気になるところはあったが
あとは自然の摂理に任せることとした
しかしながら、あの雀たちの関係は親子?兄弟?他人?
行動は愛情?本能?一体なんであったのだろう・・などと微笑ましく尊い光景を思い出しながら車に向かった
車に乗車し発車しようとしたその時
フロントガラスや屋根にパラパラと何か落ちてきた
よく見ると小さな木の実であったり
植物の種のようであった
側に樹木などもないので不思議に思い上空を見上げると
先ほどの雀たちが車の周りを飛んでいた
ちょっと考えた・・
多分、雀たちがお礼のつもりで好物の食料を私に運んできてくれたのだと思えた
何だか嬉しかった
先ほどまで、洗車したばかりの車を濡らした
空を見上げて恨み言を漏らしていたのが嘘のように今は空を見上げて舞う雀たちに笑みを向けた
私は沢山の木の実やその種など雀たちの感謝?の気持ちを貼り付けた到底数時間前に洗車したとは思えない一見汚れたように見える車に乗って、とても晴れやかな気持ちで次の現場へと向かったのでした
梟 拝
カテゴリ
タグ